瀬戸内海に浮かぶ離島が「燃料危機」に揺れた。唯一のガソリンスタンドを経営する男性が店をたたむと決めたためだ。
島内の移動に欠かせない車のガソリン、冬には暖房用の灯油も必要だ。「どうしたらいいのか」。島民たちは頭を抱えた。
丸亀港(香川県丸亀市)から船で約20分。周囲約18・5キロの「広島」(讃岐広島)が舞台だ。
島の人口は150人ほど。昭和30~40年代は採石業で栄えたが、いまは目立った産業がない。
「経営状況が厳しく閉鎖したい」
半世紀ほど前から島で唯一のスタンドを経営する金崎敏行さん(74)が、丸亀市役所の出先にあたる市広島市民センターに相談したのは、2021年末のことだった。
月の売り上げは30万円ほど。常に赤字状態で設備の維持管理にも事欠いた。クレジットカードを使えるようなレジもない。
「スタンドは島の暮らしを支えるインフラの一部分。経営的も年齢的にも限界に近かったが、みんなのことを考えるとやめるなんて言い出せなかった」
相談を受けた市民センターの山田健司所長は、翌年4月に島内7地区の自治会長が集まった場で状況を説明した。
しかし、このとき事態を深刻に捉えた人は少なかった。定休日を増やしたり営業時間を減らしたりしながら、細々と経営を続けてくれる。「もうしばらくは」。誰もが、そう思っていた。
急変した事態
半年後に状況が一変した。
金崎さんが22年10月、脳…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル